私たち日本人は「朝・昼・晩」という大きな3つの括りで時間枠を把握しています。しかしベトナム人はタイトルのように「sáng/trưa/chiều/tối」と4つの時間枠で生活をしており、時折時間の感覚にズレが起きることがあります。今回はベトナム人の時間枠の認識について書いていきます。
ベトナム人にとっての時間枠の認識とは
ベトナム語の話になりますが、先ほど書いた4つの時間枠は大よそ以下のような認識でとらえられています。
・buổi sáng:いわゆる「朝」。夜明けから下の「buổi trưa」が始まるまでの時間帯
・buổi trưa:「昼」にあたるが午前11:00ぐらいから午後13:00ぐらいまでと限られた時間帯
・buổi chiều:これも「昼」に当たるが「buổi trưa」が終わってから夜までの時間帯
・buổi tối:いわゆる「夜」
buổi trưaが日本人の考える朝と昼に跨っていますので、ここの感覚を知ることが重要(ちょっと大げさ?)だと個人的には考えます。以下でもう少し詳しく見ていきます。
sángとtốiは明るさを基準に考える
元々ベトナム語で sángは「明るい」、tốiは「暗い」という形容詞です。なので日が昇って明るくなったときから「buổi sáng (朝)」、日が沈んで暗くなったときから「buổi tối(夜)」という認識で問題ないでしょう。因みに朝ごはんは「ăn sáng」、晩ごはんは「ăn tối」と言いますので、これも一致します。
例えば友人に家で晩ごはんを呼ばれたとしましょう。夕方辺りの時間帯に行くとすると「chiềuに家に行って、ăn tối」となります。晩御飯は18:00~19:00ぐらいに食べ始めることが多く、この時間帯はまだ完全に日が沈んでおらず明るい状態。つまり「tốiに行く」と言うと、感覚的に来るのが遅いという認識になります。またご飯を呼ばれた場合は通常食べる1時間ぐらい前に行って、少し談笑したり準備を手伝ったりといったことが普通ですので、まだ明るい時間帯「chiều」にお邪魔するのが一般的です。「chiều」は13:00ぐらいからを指しますが、具体的な時間を言わなくてもベトナム人の共通認識で晩ごはんを呼ぶ場合は何時ぐらいに来るかは想定できます。
buổi trưaはベトナム人にとっての昼休み
先ほど書いた sáng と tối はそれぞれ形容詞の意味がありますので、時間関係の言葉以外でもよく登場します。一方 trưa はほとんどが時間に関する言葉で登場し、日常的に一番よく使われるのは「ăn trưa(昼ごはん)」「nghỉ trưa(昼休み)」となります。 buổi trưa である11:00~13:00は昼ごはんと昼休み(昼寝)を含めた時間帯となりますので、ベトナムでは一般的に活動がストップしやすい時間帯です。
現代は会社員も増えて、丸々2時間休むというのは難しくなりましたが、田舎や自営業の多い地区などでは昼ご飯を食べ終えたこの時間帯は静まり返っていることが分かります。この時間帯に仕事を依頼するのはある意味無作法と捉えられるかもしれません。
đêmの時間帯
これまで書いたものが大きな4つの時間枠ですが、他にも đêm といった時間枠もよく出てきます。これは日本語でいうと「深夜」に近い言葉となります。通常「 buổi tối 」の時間帯は外は暗くなっているものの、人自体はまだ大半が活動しています。なので多くの人が寝るぐらいの時間帯からこの「 đêm 」が使われるようになります。「đi làm đêm(夜勤)」や「bay đêm(深夜便)」といった街が寝静まっている時間帯でよく目にする言葉です。
日本人がベトナム人(外国人)の時間に関する話をする場合、「時間を守らない」とか「正確でない」といったところが焦点にされますが、根本的な時間枠の感覚の違いも理解しておかないと意思疎通に齟齬が生じることがありますのでお気を付けください。
余談ですが昔エチオピアに行ったときに、エチオピアは伝統的に24時間制ではなく12時間制を取っているということを知りました。これは私達の感覚の0:00~12:00というものではなく、全く互換性のない時間観念です。私は外国人なので24時間制で時間を伝えてくれる人もいましたが、お構いなしに12時間制で言ってくる人もいましたので、都度ヨーロッパ時間かエチオピア時間かを確認したものです。時間に対する常識もところ変わればを初めて経験したいい思い出です。