ベトナムは北から南まで58の省で成り立っている国でして、各省ごとの文化や風習も微妙に異なってきます。しかしこの省の中には一般に評判が悪いとされる省もありまして、この記事では実情と私の考えについて語りたいと思います。
評判が悪い省
一般に世間から評判が悪い省はベトナム北中部にある省とされています。これらの省は比較的ハノイに近いので、仕事や進学などで上京してくる人も多いのですが、一部の人から不遇の扱いを受けることもあるようです。ある程度年齢層の高い人たちのほうが侮蔑的な対応をすることが多いようですが、こういった環境で育った子どもも似たような感覚をもってそのまま大人になることも多いと聞きます。私のベトナム人の友人が大学生のときに寮で盗難騒ぎがあったそうです。入寮している学生総出で犯人の特定をしたそうですが、その犯人は該当の省から来た学生でした。その友人曰く、
「やっぱりか~」
と思ったんだったとか。特に日ごろから該当の省出身の人に対して差別的な目線をもっているわけではないですが、何か起きたときにやはり結び付けて考えてしまうと言っていました。
どのような機会で差別を受けやすいのか?
これまで私が体験した中では以下の2つがありました。
就職差別
私が人事コンサルをしている企業先で適切な人材を手配したときの話。その人は企業が求めるスキルや人間性などを満たしており、日本人代表者も採用の方向で考えていました。しかし同じ企業に勤めるベトナム人から出身地が良くないので社内の人間関係が悪くなると言われたということで、不採用という連絡が私のところに入りました。その日本人もすごくバツの悪そうな態度をしていましたが、反対しているベトナム人がその会社で中核を担っていること、またそのまま入社させた場合の人間関係の悪化を考えると採用に踏み切れなかったと言います。実際に私がこういったあからさまな出身地差別を経験したのはこの1件だけですが、確かにそういった実情があるということを確信したきっかけでもあります。
結婚差別
結婚するときにその省出身だと反対する親御さんも多いです。基本的にベトナム人は出身地が近い人との結婚が歓迎されますが、最近では離れた省の人と結婚しても受け入れる親が多くなったように思います。しかし例の省では依然反対する人も多く、私の知り合いでも「娘が~省の男と結婚するなんて断じて許さん」と公言している人もいます。また当の省出身の人も、結婚となったときに相手の親から反対される可能性があることを自覚しているのか、上京してハノイにいる人でも大体同じ省出身の人を選んで恋愛しているような嫌いもあります。
そもそもなぜ差別的な扱いを受けるのか
これについては諸説ありますが、私が見聞きしたことを纏めると以下のような結論になりました。
女性より男性のほうが差別されやすい
男性は同郷意識が高く、他の文化や風習を受け入れない人が多いので、他省出身のベトナム人とトラブルになりやすいということを聞いたことがあります。たまたまかと思いますが、私が知っているその省出身の男性は確かに短気な人が多く、他のベトナム人とけんかをしているシーンを何度か見ているので少し説得力があるように感じます。因みに上のような事情から北中部にある某日系企業では女性しか従業員を雇わないようにしているという話を聞いたことがあります。
このように現代でも確かに存在している出身地差別ですが、今の若い世代を中心にこの傾向は弱まっており、将来的にはなくなっていくのではと思っています。また言うまでもないですが該当の省の人でも特に他のベトナム人となんらそん色はありませんので、特別意識して考える必要もないかと思います。特に外国人からしたら猶更なので、余計な差別意識は持たないようにしましょう。