近年ベトナム人の留学生が爆発的に増えており、街中でベトナム人を見かける機会も増えたんじゃないでしょうか。しかし一般に考えられる留学とはほど遠い「偽装留学生」が増えているのが実情です。日本側から見るとこの辺りの事情が見えにくいと思いますので、本記事ではベトナム現地から日本へ留学するまでを追って書いていきます。
分類別に見るベトナム人留学生
交換留学生
交換留学とはベトナムの大学と日本の大学が提携して学生を相互に送り出す制度です。ベトナム側は主に日本語学科がある大学が中心でハノイの名門ハノイ貿易大学は立命館大学と提携しているなど、優秀な人材が送り出されています。私費留学と国費留学の両方がありますが国費留学生はかなり優秀で、帰国後も相応の仕事に就いています。特徴としては既に大学で日本語を学んでいることから日本語の素養をある程度持った状態で日本に来ることです。このタイプの留学生は一般に日本人が想像する留学生と大体同じですので、特に解説の必要はないかと思います。
一般留学生
ベトナムで日本語の基礎を学び、日本の日本語学校へ留学するパターンです。ベトナム現地に留学センターと呼ばれる留学生斡旋センターがあり、ここを介して日本の日本語学校へ入るパターンが殆どです。現在日本で認識されているベトナム人留学生の大半はこの一般留学生で、偽装留学生と呼ばれる層もこの一般留学生の中から出ています。
そもそも偽装留学生とは?
留学は本来勉学を目的としてその国に滞在している学生を指します。しかし偽装留学生と呼ばれる人は「金を稼ぐ目的で入国、滞在」をしています。こういった目的で入国する人はベトナム国内でも所得が低い層ですので、普通は日本語学校の授業料(年間100万円弱)を収めることができませんし、日本での生活費もかかります。一体どのようにやっているのでしょうか?
アルバイトで月収30万円
上に書いた授業料、生活費のお金が無いのなら日本で稼いでその額をねん出しなくてはなりません。授業料、生活費、家族への仕送り、貯金・・・これだけをアルバイトで稼ぐとなるとどれだけ血眼になって働かないといけないでしょうか。それこそ毎日フルタイムで夜勤もこなしてい働いている偽装留学生はたくさんいます。人によっては月に30万円以上稼ぐベトナム人もいるようなので驚きです。
留学生にはアルバイト時間の制限があるが・・・
留学のビザで滞在している人は一週間に28時間までしかアルバイトしてはいけないことになっています。しかしこの時間通りに働いていては全然話になりませんので時間枠を超えて働くことになります。しかし一つの会社でこの時間枠を超える額の給料を貰っているとすぐにバレてしまいますので、複数のアルバイト先を掛け持ちすることが普通です。また会社によっては足がつかないよう給料を手渡しで渡しているところもありますので、日本の会社も黙認(つまりグル)ということが窺えます。
日本語学校の授業は?
日本語学校は法律上、留学生の出席率を保たないといけないのですが、深夜労働をしている留学生が通常通り授業を受けることができるはずがありません。なので授業には来てもただ寝ているだけという留学生もいます。とりあえず教室に来ていないと営業停止処分を受けるので形だけでも教室に来ることを促しますが、こういった留学生を経営上の目的のためだけに受け入れている日本語学校は不良日本語学校と言われます。少し古い言われ方では「不法就労の隠れ蓑組織」みたいな言われ方もされていました。
日本語学校を卒業後の進路
日本語学校は普通に行くと2年で卒業することになります。しかしたったの2年間では十分なお金を稼ぐことができないので、引き続き身を寄せる何かしらの所属機関が必要です。多くの留学生は専門学校に進みますが、就労に時間を費やし日本語の勉強は疎かになっている人が大半です。ですのでとりあえず授業料を支払えば入学できるような専門学校へ流れることになります。これは一部の大学でも同じようなことが言え、少し前にもニュースになりました。偽装留学生の裏には必ず日本人のグルがいるということです。
結局は日本の人手不足に起因する
ここで書いている偽装留学生は在留資格を違反しているので許されることではありません。しかし必ずしも「偽装留学生=悪人」ではないということも押さえておくべきかと思います。日本の人手不足は説明の必要がありませんが、日本人の若い子がやりたがらない、全然人が集まらない仕事を一生懸命やってくれると、雇用主はどれだけ助かるでしょうか。そういった留学生たちとやり取りをしていれば情の面も生まれるでしょうし、事実日本の人手不足を補ってくれている面は否めません。法を犯しているとはいえ、人手不足の穴を喜んで埋めてくれる外国人を無碍に扱うことができない雇用主の気持ちも分からなくはないです。
全うな在留資格で日本に来ればいいのでは?という考えについて
それならちゃんと仕事ができる在留資格で日本にくればいいじゃないかと思う人もいるかもしれません。しかし実情はそう単純な話ではなく、これも様々な要素が絡み合っています。
人手不足は外国人に規制があるという実情
現在外国人の単純労働は日本で禁止されています。これは日本人の雇用機会を奪うかもしれないという懸念や治安悪化など様々な話があります。なので現在人手不足が叫ばれている業界は基本的に外国人を手軽に雇用できることができません。それを補うために技能実習生がいるわけですが、依然国が技能実習という建前の名目に固執している点、また研修期間の上限などがあることから人手不足を補う十分な役割にはなっていないようです。
特定技能制度という新しい取り組み
実質外国人の単純労働を認めた特定技能制度という新しい在留資格が2019年から開始されました。しかし現状ではその制度そのものに見切り発車的な部分が多く、現時点で浸透にはほど遠い状況です。この制度発表当時、ベトナムでも技能実習に代わる新しい制度ということで注目を浴びていましたが、現在では既に忘れられている感すらあります。また現行の技能実習制度で儲けを得ている既得権益などが日越両国に存在しますので、どこまで技能実習に代わって普及するのかは疑問が残ります。
最近ではベトナム人の犯罪が増えて、この手の層のベトナム人に非難の声が上がっています。もちろん罪を犯したベトナム人はしかるべき措置を取ってベトナムへ帰らせればいいと思いますが、この手の事件ですぐに外国人排斥の声を上げるのは短絡的かと思いますし、自分たちが外国人労働者から受けている恩恵を自覚するべきではないでしょうか。